電車内の奇跡 (#162 wise)
昨日の事なんだけどさ。
奇跡を目撃したんだ
L'Arc-en-Cielを聴きながら電車に揺られていたんだ。
すると、とある駅で電車が停まってしまったんだよ。
その時間帯のその路線は、確かに遅延が発生していてさ。
wiseが乗っていた電車もちょいちょい停まっていて、スムーズではなかったんだ。ただ停まっても1分や2分の事だったんだ。
乗車する人はそんなに多くない時間帯だったから、特に殺伐とした空気感はなかった。
wiseも殺伐とはしていなかった
wiseはなかなか殺伐としない事で有名なんだ。なかなか殺伐としない、という事だけで生計を立てていた時代があるくらいだからね。
そんなwiseが殺伐としてしまった暁には、周囲にある石だとか、草、木や花、カントリーマァム等、それらは一瞬にして焼けただれてしまい焼け野原となってしまうであろう。
だから殺伐としないようになったんだ
周りに被害があるからね。
話を元に戻そう
とにかく電車はピタリと停まってしまった。まるで今まで少しづつでも動いていた電車が停まってしまうかのように。その例えしか見当たらない。
『今回はなかなか長く停まるなぁ』
そのくらいに考えていた。wiseは時間に余裕を持って行動するため、全く気にしない。
車内アナウンスは"ご迷惑をかけております"という、どちらともとれない様な内容を繰り返している。理由も明示されない。
15分ほど経った時の事だった
wiseの隣に座っていた上品な格好をしたお婆様が、少しだけソワソワし始めたんだ。
実際にソワソワが動きに出たわけではない。なぜなら上品なお婆様だからね。
wiseは人々のソワソワを察知する事で、生計を立てていた時代があるから判っただけなんだ。
ただし電車が動かないからソワソワしているという感覚ではなかった。
電車を動かそうとしているソワソワ
なぜかwiseはそう感じたんだ。
『この上品なお婆様、電車を動かそうしている』
そんな事が一般の人間に可能なわけはない。だって人命が関わってしまうかもしれないんだぜ?下手には動かせない。
奇跡が起こったのは、そんな事を考えていた時の事だった。
上品なお婆様が
音もなく
立ち上がったんだ
もちろんそれだけではない。
上品なお婆様が立ち上がり、目線を上に向けると、
“電車が動きます“
車内アナウンスと共に電車は動き出したのだ。
そして上品なお婆様を見ると、もう元通りの形で座っていたんだ。
wiseは全てを悟ってしまったんだ。
『この上品なお婆様が、この世界を牛耳っているんだ』
『世界を動かしているんだ。電車を動かす事なんて造作もない事なんだ。』
てね。
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